ゴロネ読書退屈日記

ゴロネ。読書ブログを目指している雑記ブログ。2人の息子とじゃれ合うことが趣味。

『世に棲む日日』とヒゲと八重洲ブックセンターの話

ヒゲが来週結婚する。

 

「ヒゲ」とは高校時代からの友人のあだ名である。ヒゲは高校生の頃からヒゲを蓄えていた。あの頃はまだヒゲが薄かったが、徐々に濃くなっていき、今ではボボボーボ・ボーボボだ。

 

僕の数少ない友人のひとりであり、今でもたまに一緒に遊ぶ。昨年の大晦日は、妻が友人との忘年会に行ったことをいいことに、ヒゲと自宅で6時間くらい「スーパーマリオブラザーズ3」をプレイした。

 

ヒゲから結婚式の招待状が来たので、出席に丸をつけ返信した。式は鎌倉で行なわれるらしい。僕は自分の結婚式を挙げたことはあるのだが、親戚や友人が少ないため、実は一度も他人の結婚式に出席したことがない。ヒゲの結婚式が初めて招待された結婚式だ。どんな結婚式でどのようなお嫁さんなのか、楽しみである。

 

 

先日、仕事の関係で久しぶりに都内に行った。

 

フリーターの頃、都内によく遊びに来ていた。主に名画座やミニシアターを一人ではしごしていた。大学を卒業した直後、周りの友人が社会人デビューする中、自分だけ無職である不安から、憂鬱な心理状態が続いていた。そんな中、今は無き銀座シネパトスに森田芳光監督の追悼特集を見に行き、『(本)噂のストリッパー』を見て笑ったり、『の・ようなもの』を見て泣いたりして、「ま、なんとかなるか」と前向きになったことが懐かしく思い出される。

 

ヒゲと東京ドームで行われたポール・マッカートニーのライブにも行ったなあ。"Hey Jude"をポールが歌ったとき、近くにいたおじいさんが直立しながら、涙を流していたのが印象的であった。

 

都内での仕事帰りに、東京駅にある八重洲ブックセンターに寄った。八重洲ブックセンターは妻がつきあい始めた頃にお気に入りの場所として紹介してくれた本屋で、自分も一度で気に入り、近くに来る度に足を運ぶ。

 

この日、購入した本は、『パパは脳科学者』(池谷裕二/クレヨンハウス)、『大人のための国語ゼミ』(野矢茂樹山川出版社)、『正しい本の読み方』(橋爪大三郎講談社現代新書)、『グローバライズ』(木下小栗/川出書房新社)『銃・病原菌・鉄(上下)』(ジャレド・ダイアモンド草思社文庫)、『古典落語』(興津要講談社学術文庫)、『宮本武蔵(八)』(吉川英治新潮文庫)、『世に棲む日日(三)』。

 

新装版 世に棲む日日 (1) (文春文庫)

新装版 世に棲む日日 (1) (文春文庫)

 

 

最近特にハマっている小説が『世に棲む日日』である。司馬遼太郎に熱中する時期が一年に何回かある。続けて『翔ぶが如く』を読んで、来年の大河ドラマ『西郷どん』に備えるどん。

 

加えて、絵本が大好きなハルタ(現在0歳6か月)に、わかやまけんさんの絵本『しろくまちゃんのほっとけーき』を買った。家に帰って読み聞かせるのが楽しみだ。

 

八重洲ブックセンターからの帰宅時、ヒゲに結婚式に招待されていたことを思い出し、ご祝儀袋を買った。

 

ヒゲと僕は、高校生の時に同じバスケットボール部に所属していた。ヒゲは、チェストパスの勢いで、たまに肩が外れてしまう実に愉快な奴であった。

 

当時、僕たちのバスケ部は地区の強豪であり、上手なプレーヤーがたくさん集まっていて、ベンチ争いが激しかった。部員は仲間であり、ライバルであった。お互いに切磋琢磨することで、自己の能力を高めていた。今ではナマケモノの代表みたいな自分であるが、当時は仲間と自分に負けたくない一心で努力に努力を重ねた。しかし結局、ベンチメンバーになれたことは数回しかなかった。バスケットプレーヤーとしての自分を覚えている人は、今やもうほとんどいないだろう。ただ、自分は自分自身の頑張りをしっかりと覚えている。そのことが今大きな財産となっている。

 

顧問も部員の競争をあおるのがうまかった。それに加え、師となる人には必須である、人を見抜く能力にも長けていたように思える。

 

『世に棲む日日』の吉田松陰も、そのような師としての能力がずば抜けて高い。

 

松陰の開いた松下村塾の塾生である久坂玄瑞は、同世代の高杉晋作に入塾を勧めた。晋作と出会った松陰は、高杉の詩文集を熱心に読むと、高杉に言った。

 

 「久坂くんのほうが、すぐれています」

 

松陰のこの言葉の真意は以下である。

 

松陰は、高杉のような自負心の強い男は一度その「頑質」を傷つけて破らねばならぬとおもった。文集をみると、明倫館ではなるほど秀才かもしれないが、学問や素養はまだ当人が気負っているほどには至らず、たしかに久坂に劣る。むしろ久坂に対する競争心をあおると、かならず他日、非情の男子になると思った。

 

その思惑どおり、「高杉の学問はにわかに長じ」、のちには歴史に名を残す大人物になった。

 

近頃「ブラック部活」の話題が取りざたされている。僕は基本的には、学校における部活廃止の考えも選択肢に含めながら、根本的に部活のあり方を改善した方がいいと思っている。中学校の教員の知り合いが何人かいて、彼らの話を聞く機会があるが、部活による過重労働の現状は思っていた以上に悲惨だ。

 

ただ、自分自身の部活での体験を振り返ると、部活から得たものが少なくないことも事実である。自分自身の限界に挑戦することの大切さ、仲間と協力し、互いに切磋琢磨することの大切さを学んだ。何よりも、一生の付き合いになるであろう大事な友人を得た。

 

 

僕は自分の結婚式の料理として出た、フォアグラの味が忘れられない。ヒゲ、フォアグラ頼むぞ。