ゴロネ読書退屈日記

ゴロネ(89年生まれ)一児の父。好きなものは読書、映画鑑賞、息子ハルタとじゃれ合うこと。

鎌倉の結婚式と『ぼくの短歌ノート』とゆとりの生き方の話

友人であるヒゲ(あだ名)の結婚式は鎌倉で行われた。この日はしとしとと雨が降っていた。

 

式に招待された友人たちと待ち合わせをし、一緒に会場に向かった。鎌倉駅江ノ電に乗り換え、長谷駅で降り、傘を開いた。

 

雨にもかかわらず、たくさんの観光客がいた。すごいぞ鎌倉。

 

「雨の鎌倉もいいもんだね」と隣のガンダム(あだ名)に言ってみたが、ヒゲから頼まれた乾杯のスピーチに緊張しているのか返事がない。

 

鎌倉には何度か来たことがある。初めて来たのは、中学校の遠足だった。

 

その遠足でいちばん思い出に残っているのは、銭洗財弁天に行ったことである。銭洗財弁天は、お金を洗うと何倍にも増えて戻ってくると伝えられる霊水「銭洗水」が湧く神社で、鎌倉では人気スポットだ。中学生の僕は、ほかの観光客に混ざり、お小遣いを神社の霊水で洗った。

 

遠足が終わると、国語の先生が鎌倉遠足の思い出を短歌にしようという課題を出した。

 

僕は銭洗弁天での思い出を短歌にしてみた。なぜかこの句を今でも覚えている。

 

洗えば倍信じて洗って気分はグー しかし帰りの財布はパー

 

このように自分が作る句はすこぶる下手なのであるが、人の短歌を読むのは好き。

 

おすすめの短歌本は、穂村弘の『ぼくの短歌ノート』。

 

ぼくの短歌ノート

ぼくの短歌ノート

 

 

人気歌人にして名エッセイストの著者が、近現代の短歌の中から意想外のテーマで名作・傑作を選びだし、眼からウロコの講評を加えていく。「コップとパックの歌」、「ゼムクリップの歌」、「賞味期限の歌」、「身も蓋もない歌」、「落ちているものの歌」、「間違いのある歌」、「ハイテンションな歌」「殺意の歌」……などなど著者ならではの鮮やかな視点と鋭い言語感覚、一つの短歌から新たな世界を発見する、魅力に満ちた傑作短歌案内エッセイ。 (amazon.co.jpより)

 

この本に収録されている短歌をいくつか紹介します。

 

現実を逃避したとて現実を逃避しているという現実

   松本 秀

 

土曜日も遊ぶ日曜日も遊ぶおとなは遊ぶと疲れるらしいね

   平岡あみ

 

したあとの朝日はだるい 自転車に撤去予告の赤紙は揺れ

   岡崎裕美子

 

 

結婚式は和式で、祝言が行われた。こういう結婚式もいいなあ。(年始に行った僕の結婚式は、牧師さんの前で愛を誓った)。ヒゲのヒゲと袴がよく似合っている。

 

ガンダムの乾杯の音頭を皮切りに、披露宴は和やかに進んだ。

 

新婦は美しいし、料理とお酒はうまい。皆笑っている。たまに涙もあり。幸せですね。なんて素敵なひとときであろうか。

 

ヒゲのお父様のスピーチが始まった。ヒゲは生えていない。

 

「今後の人生、さまざまな障害が待ち受けているかもしれませんが、夫婦仲良く手を取り合って……」とかなんとかおっしゃっていた。

 

僕は『ぼくの短歌ノート』に載っていた、ある短歌を連想した。

 

二人してかたくつないで歩く手も離さねばならぬ別れる時は

   中村清女

 

この句に対する穂村弘の評は以下。

 

 内容だけをみれば、子供でも知っていることだ。しかし、このように言葉にされると奇妙に胸に迫るものがある。ちなみに作者は八十代の女性。同様のことをいわゆるプロの歌人が詠おうとすると、「別れる時」が最初から死のメタファーとしてのニュアンスを帯びてしましそうだ。だが、引用歌では、まず「手」に心を向けた日常のさみしさを詠いつつ、そこから無意識の死が滲み出ているところに魅力がある。

 

結婚式の場で、「別れ」について考えている自分に気づき、あきれる。いやな奴め。

 

新婚さん、いらっしゃい。いつか離さねばならぬその日まで、手をかたくつなぎ続ける努力をしていきたいものですね。

 

しかし、お父様のおっしゃるとおり、未来に待ち受けるのは障害ばかり。

 

景気は悪いし、待機児童は多いし、消費税はアップするし、高齢者は増えるし、奨学金やローンは返済できないし、教育費はかさむし、残業は減らないし、年金はもらえないかもしれないし、国の借金は膨らむ一方だし、原発事故は怖いし、政治家は不倫をするし、ミサイルは飛んでくるかもしれないし、歯は痛むし、痔は治らない。

 

……まあ、僕たちゆとり世代は元々、未来にそれほど希望なんぞ持っちゃいないけどね。今の世の中は暗いし、これからもどんどん息苦しい社会になるってお話を刷り込まれてきたから。

 

刹那主義と批判されるかもしれないけれど、とにかく今この瞬間を楽しむ心持でありたいものだ。

 

ゆとりはゆとりらしく、心にゆとりを持って、この瞬間の小さな幸せを少しでも見逃さずに掬いとり、それを積み重ねていくような生き方をするのがいいんじゃないかなって僕は思うよ。

 

 

ヒゲと新婦さん、ご結婚おめでとう。末永くお幸せに!