父親になって初めてのクリスマスと『アンパンマンのサンタクロース』の話
1
クリスマス・イブ、日が沈んだ頃、予約したケーキを取りに行くため、ひとり家を出た。
寒い。コートに手を突っ込み、きらびやかに飾られた夜の町を歩く。
通りがかった居酒屋の前で、サンタクロースの格好をした可愛らしい女の子3人組がチキンを販売していて、「おひとついかがですか?」と声をかけられた。
僕は「チキンは買うつもりはなかったけど、お姉さんたちがきれいだから、おひとつ下さい」とかは言えないチキン野郎である。さらに、妻からの「寄り道してきたら殺す」というテレパシーが聞こえた気がしたので、軽く会釈をし、ケーキ屋への道を急いだ。
2
幼い頃にもらったクリスマスプレゼントでよく覚えているのは、『忍者戦隊カクレンジャー』に登場するニンジャマンの玩具である。僕は戦隊シリーズが大好きであった。(実は今でも好き)
その年の25日の朝、目覚めると、枕元にニンジャマンの入った箱が置いてあり、僕は狂喜した。サンタさん、ありがとう!!
やがてその狂喜は、今までにない高熱に発展し、僕はしばらく寝たきりとなった。前日の24日の夜に、サンタさんの姿を一目見ようと限界まで起きていたことによる疲れもあったのかもしれない。
あれから20余年経ち、今年は子供が生まれ、遂に僕も子供をクリスマスに喜ばせる側となった。
息子がもう少し大きくなったら、プレゼントに戦隊シリーズのロボットを買ってやろう。(息子のために買ってあげるというのはタテマエで、自分が欲しいのがホンネ)
3
家に帰ると、持ち帰ったケーキを冷蔵庫にしまい、サンタの帽子をかぶり、生後9ヶ月の息子にはドンキホーテで購入した幼児用のサンタの服を着せた。本人は何を着せられているのかは分かってないだろうけど、素材がモコモコとして暖かいのか、着せると笑顔になった。
妻は煮込みハンバーグをこしらえ、それをテーブルに置いた。クリスマスパーティの開始である。僕は威勢良くシャンメリーを開けた。
「ポンッ!」という快音と同時に中身が噴き出し、カーペットの上にぼたぼたとこぼれた。「ぎゃあああ」と妻。この騒ぎに泣き出す息子。せっかく笑ってたのに。
カーペットをごしごしと拭き(みじめ)、息子をあやし、気を取り直してパーティを再開した。
息子へのクリスマスプレゼントの一つである絵本『アンパンマンのサンタクロース』を、僕は息子に読んであげた。
4
アンパンマンが、お腹を空かせた、あかはなのトナカイとくまのサンタクロースに自分の顔をあげ、少しずつ顔がなくなっていく過程の絵が衝撃的である。
アンパンマンの かおを たべて
げんきになった ふたりを
そりに のせて、アンパンマンは
そらへ とびあがります。
「かおが ないのに
だいじょうぶかなあ。」
……こわい。
5
妻と自分へのクリスマスプレゼントは電動歯ブラシである。
妻が以前から電動歯ブラシが欲しいと言っていたのと、僕が久しぶりの歯医者でクリーニング指導を受け、歯磨きへの意識が高まっていたことから、妻と僕の分の電動歯ブラシを購入した。
末長く使うだろうと思い、どうせなら機能がたくさんついているやつにしようと、1本2万円ほどするやつを買った。2本買ったので計4万円。勇ましく奮発したが、会計時ちょっと泣きそうになったよね。
さっそく使ってみた。
ヴィィィィィィィィィィ……
おお、なんかしっかり磨かれている気がする。ブラシのところは取り外しが出来て、ブラシの毛がへたっても、新しいブラシ部を買えば、半永久的にこの電動歯ブラシは使える。
ここであることに気づく。妻と同じタイミングで歯を磨くことはほぼない。
別に本体を2本買わなくても、夫婦共有の本体を1本買って、ブラシ部だけを2人分買えばよかったんじゃね?
……ヴィィィィィィィィィィ……
おお、ホワイトニング機能とかあるじゃん。歯がツルツルになる。電動歯ブラシによる歯磨きにハマりそうだぜ。
2018年は、歯磨き系男子を目指そう。