『吾輩は猫である』とマイホームの夢の話
1
猫がちょっと苦手だ。別に猫に何か危害を加えられたといった思い出はないのだけれども、ただ苦手なのである。
特に猫のあの目に苦手意識がある。猫を前にすると、人の心を見透かされているような心持ちになり、妙に落ち着かない。
『吾輩は猫である』の名もなき猫のように、猫にいろいろと観察されたり、言動をいちいち批評されてたとしたらたまったものではない。
人間の定義を言うと、ほかに何もない。ただ入らざることを捏造して自ら苦しんでいる者だと言えば、それで充分だ。
2
僕と妻、10ヶ月の息子ハルタの3人で、静岡に一泊二日の小旅行をした。
初日の朝、軽く朝食を済まし、荷ごしらえをし、車で出発した。最初の目的地まで、3時間ほど走る。車を運転していると、だんだんとお腹がすいてきた。
「お腹すいた。どんぐり食べたい」と僕。
「リスかっ。……おにぎり握ってきたよ」と妻
おにぎりを受け取り、食べた。うまし。梅干しおにぎり大好き。
そういえば、家族3人で車に乗って旅行するのは初めてだ。なかなか楽しい。
最初の目的地は、妻の友人夫婦の新築のお宅である。
3
妻の友人宅には、猫がいた。
人懐っこい猫で、僕にも体をすり寄せてきた。「うっ……」あまり気にしないようにした。
ハルタを猫の前に出してみた。ハルタはこれまで人見知りをほとんどしなかったし、犬などに出会ってもケラケラと笑って、結構図太い。さて、猫はどうかしらん。
「うわあああああ!!」
めっちゃ泣いた。
妻の友人宅をあとにするまで、ハルタはずっと猫におびえ、ぐずぐずし、妻にしがみついていたのだった。
4
お家を見学させていただいたが、妻の友人夫婦の思いやこだわりの詰まった素敵なお家であった。
僕ら家族は、現在3人で賃貸マンション暮らし。家を建てることになったら、将来のことを考え、大変だろうけど、こだわりを持ってみたい。
定職に就き、結婚し、子供を授かり、マイカーを購入した。妻とちゃんと話し合ったわけではないが、次はマイホームだなと自然にぼんやりと考えていた。案外、僕って持ち家信仰者だったのね。
理想の家というのもないわけでもなく、僕としては、壁の少ない、開放感のあるお家に住みたいなあと今のところなんとなく思っているのである。
5
上の記事に、『吾輩は猫である』の珍野苦紗弥邸の間取り図が載っていた。
壁が少なく、障子やふすまで畳の部屋を仕切る、純和風住宅である。ちょっとこういう昔風な家にも憧れがあったりする。
とりあえず、どんなに狭くてもいいから、苦沙弥先生宅のように自分の書斎が欲しいという夢もある。
一家団欒のときが過ごせる開放感のある家に住みたいという願望もあるけど、一日に1,2時間くらい、閉鎖された静かな書斎で、ひとり読書に耽りたいという相反する欲望もあるのです。