ゴロネ読書退屈日記

ゴロネ(89年生まれ)一児の父。読書ブログを目指している雑記ブログです。息子ハルタとじゃれ合うことにはまっています。

『風姿花伝』を読んで

 

ここ数日、仕事でのミスが続いている。スケジュール管理での失敗など、初歩的なミスが多い。

 

今の会社に入社して、今年度で3年目である。2年しか仕事をしていないくせして、「自分はもう一人前である」という慢心がどこかにある。

 

さらに、1年目の頃と比べると、仕事に対する情熱や新しいことに挑戦しようとする気概が減じている。仕事は楽しいが、正直言って、惰性で仕事を処理している時間が増えた。

 

仕事は自己実現のためにやっているわけではないと思っているし、仕事に対して「意識低い系」でありたいと思っていた。しかし、このままでは自身の人間性自体がどんどんとよくない方向に進んでいくような予感がし、今更ながら、不安と焦りを感じるようになったのである。

 

職場の僕の机には、1年目の自分が書いた、「初心忘るべからず」という走り書きのメモが貼ってある。

 

 

 

久しぶりに古文が読みたくなり、『風姿花伝』と、その読書案内である『NHK100分de名著ブックス 世阿弥 』を買って、GWに読んだ。

 

風姿花伝 (岩波文庫)

風姿花伝 (岩波文庫)

 
NHK「100分de名著」ブックス 世阿弥 風姿花伝

NHK「100分de名著」ブックス 世阿弥 風姿花伝

 

 

風姿花伝』を残した世阿弥は、室町時代に能を大成した人物であるということは、学生時代、歴史の教科書で学んだ。ただ、「初心忘るべからず」が世阿弥の言葉であるということは知らなかった。

 

風姿花伝』は、世阿弥が父である観阿弥から受け継いだ能の奥義を、子孫に伝えるために書いたものである。この書の中で世阿弥は、若い頃の初心、人生の時々の初心、老後の初心を忘れてはならないと言っている。

 

若い頃の初心とは、具体的には24〜25歳のころを言っている。この頃の能役者に対する戒めの言葉が、今の堕落しかけている僕にとってまさに大事に思えた。

 

  この頃の花こそ初心と申す頃なるを、極めたるやうに主の思ひて、はや申楽にそばみたる倫説をし、至りたる風体をする事、あさましき言葉なり。たとひ、人も褒め、名人などに勝つとも、これは一旦めづらしき花なりと思ひ悟りて、いよいよ物まねをも直にし定め、名を得たらん人に事を細かに問ひて、稽古をいや増しにすべし。(『風姿花伝』第一 年来稽古条々)

 

あたかも道を極めたかのように思って、人々に話をし、さもそのように舞台でまったりするのは、なんとあさましく、嘆かわしいことであろう。

   むしろこの時期こそ、改めて自分の未熟さに気づき、周りの先輩や師匠に質問したりして自分を磨き上げていかなければ、「まことの花」にならない。(中略)新しいものへの関心からみんなが褒めたたえてくれている時、その中に安住してはいけないと世阿弥は言っているのです。そこでいろいろと勉強しなおして初めて、その上のステップに行けるというのです。(『NHK100分de名著ブックス 世阿弥 風姿花伝』P48) 

 

自分は「イケてる」と勘違いし、堕落していくのがいちばん怖い。成長した息子にも「かっこ悪い父親」と思われたくない。

 

世阿弥がいうように「初心」を忘れることなく、自身を日々更新する努力をする生き方をしたい。

 

 

 

『NHK100分de名著ブックス 世阿弥 風姿花伝』の筆者である土屋惠一郎は、『風姿花伝』に書かれている「住する所なきを、まづ花と知るべし。」を最も好きな世阿弥の言葉としてあげている。

 

意味はまさに字の通りで、一つの場所に安住しないことが大事である、ということです。(中略)今までやってきてうまくいったのだから、これ以上のことはやる必要はない、同じことをやってればいい、という心こそがだめだと言っているのです。(P114)

 

千葉雅也が『勉強の哲学』で書いていた「勉強とは、これまでの自分の自己破壊である」という言葉と通じるところがある。なんだか『風姿花伝』を読んで、仕事も趣味も現状に満足して惰性でこなすのではなく、一つひとつの取り組みに情熱を傾けつつ、新しいことにどんどん挑戦したいと思えるようになった。

 

へたな自己啓発書を読むより、かなり啓発されました。『風姿花伝』が時代を超えて読み継がれていることに納得です。

 

 

 

まずは新しいことへの挑戦の手始めに、元々勉強したいと思っていた「社会学」の勉強を始めることにした。仕事や趣味の幅を広げることにもつながる気がする。

 

入門書として、『社会学』(有斐閣)を買った。

 

社会学 (New Liberal Arts Selection)

社会学 (New Liberal Arts Selection)

 

 

3500円(+税) ……。専門書とあって、ちと高い。

 

息子が1歳になり、育休中の妻の育児手当が終わってしまった危機感から、妻が「節約宣言」をした。このところ僕は本を立て続けに買っているので、またこんな本を買っていると妻にバレたら叱られるだろう。

 

自己破壊も楽じゃないです。