ゴロネ読書退屈日記

ゴロネ。読書ブログを目指している雑記ブログ。2人の息子とじゃれ合うことが趣味。

一歳の息子の熱性けいれんに慌てた話

 

金曜日の午前中、「ハルタの熱が下がらない。病院に連れていきたいから、早めに帰ってきて」と妻から連絡があった。その前日の夜から一歳の息子は38度以上の熱を出していた。

 

僕は職場を定時に出た。積みあがった仕事は土日に処理すればいい。僕はもう自分の人生の主人公の座からとっくに降りた。息子より優先するものは何もない。

 

かかりつけの病院に息子を連れて行くと、普通の発熱と診断され、お薬をもらった。家に帰ると息子はつらいのかすぐに寝ころんだ。「はあはあ」と息遣いが荒く、深く眠れないようで、たまに泣いたりして、苦しそうであった。

 

そのうち、息子のほうから少し大きめの「ちゅぱちゅぱ」という音が聞こえてきた。息子は眠るときは指をしゃぶるので、いつもその音はかすかに聞こえている。しかし、いつもの睡眠中と違って、そのときの「ちゅぱちゅぱ」の音はやけに大きかった。

 

様子を見ると、口から大量の唾液が出ていた。そして息子の体が変な動きを始めた。……けいれんしている!

 

そのうち、白目をむき、顔が真っ青になった。かなり焦った。背中をさすって、名前を呼んだが、反応はない。

 

「これ、熱性けいれんだよ」と妻も慌てた様子で言った。「なんだそれ?」こんなの初めてである。

 

1分くらい経つが、息子のけいれんはとまらない。「救急車呼ぶ?」と妻。「……うん、呼ぼう」救急車を呼ぶべき事態か判断がつかなかったが、呼ばずに後悔するより、呼んで反省するほうがマシである。

 

さらに1分ほど名前を呼びかけると、やっとけいれんが止まった。そして、息子は大声で泣き始めた。「あ、生き返った」

 

そして救急隊の方がやってきて、救急車で運ばれる間、息子は大声で泣き続けた。熱に浮かされ、「バイチーン!!バイチーン!!」と叫んでいた。

 

「バイチーン」とは、息子が大好きなバイキンマンのことである。息子にとって、自分を窮地から救ってくれるヒーローは、アンパンマンではなく、どういうわけかバイキンマンなのであった。

 

 

 

病院でもハルタは力の限り泣き続けた。しばらくの間のけいれんを防ぐ座薬をお医者さんに入れてもらい、その副作用で眠気がやってきたようで、泣き声はやみ、深い寝息を立て始めた。安らかな寝顔である。

 

熱性けいれんは幼児期に起こりやすいらしく、日本人の10人に1人が幼児期に高熱を出したときにこのけいれんを起こすそうだ。けいれんの発作自体が生命にかかわることは、まずないということを知った。

 

「よく熱性けいれんだって知ってたね」と僕は妻に言った。

 

「いや、熱性けいれんの特徴を詳しく知ってるわけではないよ。言葉だけ知ってた。けいれんについては大学のときに研究してたから。てんかんの遺伝子を持ったネズミを繁殖させて、それに興奮剤みたいの打って、てんかん起こさせて、そのけいれんを観察してた」 

 

「ひどいことするね」しかしながら、そのような研究によって医療の進歩は支えられているのである。

 

座薬を入れて、効果が効き始める2時間が経ったので、お医者さんにお礼を言い、息子を抱えて自宅に帰った。

 

あれから数日経ったが、熱は引き、息子はすっかり元気を取り戻した。日曜日の夜は、『西郷どん』のOP曲を聴いて、おしりを振りながらニコニコして踊っていた。

 

 

 

―ええ、そうですね、情けない話ですが、息子がけいれんしているときはかなり動揺しました。あのような症状を見たのは初めてだったので。後々ネットで熱性けいれんのことを調べてみると、救急車を呼ぶほどの状況ではなったかもしれないと思いました。救急車の無駄な出動が問題になってますし。

ただ、あのときは本当に焦りに焦って、息子が息苦しそうにしている様子に見えたので、「もしかしてこのまま死んじゃうかも」ということが頭によぎり、怖くなったのです。けいれんが収まり、命にかかわるものではないと知ったときは、妻には内緒ですが、ほっとして泣きそうでした。子供のなりやすい病気についてちゃんと知っとこうと思う、よい機会になりました。