アンパンマンで、2歳息子の映画館デビューの話
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そして、イヤイヤ期は到来した。
2歳の息子・ハルタは、何をさせようとしても「やだ!」と言って逃走してしまう。
「お着替えしよう」「やだ!」「マンマ食べよう」「やだ!」「お風呂入ろう」「やだ!」「歯磨きしよう」「やだ!」「ネンネしよう」「やだ!」「 」「やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ……」
「アンパンマンの映画見にいこう」
「うん!!」
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休日のTOHOシネマズは、激混みもみくちゃ丸であった。
満身の力を腕にこめてハルタを抱え、打ち寄せ渦巻き引きずる人の流れを、何のこれしきとかきわけかきわけ、獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐憫を垂れてくれ、チケットとポップコーンを購入することができた。スクリーンに入場するときに、入場者限定プレゼントであるマラカスをもらった。映画を鑑賞しながら、これを振って鳴らしてもいいそうだ。
アンパンマンの映画は、「まっくらじゃない!」「やさしい音量」「歌って踊れる!」を売りにしていて、子供の映画館デビューに最適である。上映中は、歌ったり踊ったり、大きな声でアンパンマンを応援したりしても大丈夫(大人は遠慮しましょう)。
映画『それいけ!アンパンマン/アイスの国のバニラ姫』が始まると、アンパンマンの登場に子供たちは大喜び! ハルタは初めての映画館での映画鑑賞。僕は泣き出してしまうのではないかと心配していたが、彼も大喜びでマラカスを振って、「アンパンマーン!」と叫んでいた。
ストーリーは、これまでのアンパンマン映画の構成をほとんど踏襲している(これまでのアンパンマン映画はDVDで大体見た)。悩める未熟なゲストキャラがアンパンマンたちとの交流、バイキンマンとの戦いを通して、人間(?)的に成長するというのがお決まりの流れだ。
今回のゲストキャラは「アイスの国」のバニラ姫。バニラ姫は、上手にアイスを作ることができず、自信を喪失し、アイスの国を飛び出してしまう。しかし彼女は、人の笑顔のために、自身の顔を分け与え、ときには悪とも戦うアンパンマンと出会い、アイス作りに本当に大切なものに気づくのであった。
3
アンパンマンの作者である、故・やなせたかし氏は、日中戦争、太平洋戦争への従軍経験がある。戦中と戦後直後の飢えの経験から、やなせ氏は「人生で一番つらいことは食べられないこと」という思いに至ったそうだ。この体験こそが、アンパンマン誕生のきっかけである。
アンパンマンは自分の顔を食べさせ、飢えを満たすことで人を救う正義の味方である。一般のヒーローのように決して戦闘力は高くない。顔の一部を与えたり、雨に濡れたりすることで力が半減してしまう。しかしそれでも、やなせ氏はアンパンマンこそが本当の正義の味方であると信じている。権力や暴力を振るってのさばる連中にやなせ氏はほとほと嫌気がさしていたのではないか。
絵本『あんぱんまん』の巻末には、以下のやなせ氏の名言がある。
ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そしてそのためにかならず自分も深く傷つく。
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アンパンマンの映画にハルタは非常に満足した様子であった(実は僕は最後の10分くらい寝てしまった)。映画館を出ると、妻と次男・レイ(生後4ヶ月)と合流。スーパーに夕飯を買いにいった。
すっきりしない空模様が続きますね。今年の夏は子供と水遊びでもしたいです。