ゴロネ読書退屈日記

ゴロネ(平成元年生まれ)。読書ブログを目指している雑記ブログ。2人の息子とじゃれ合うことが趣味。

中国発SF小説『三体』が面白すぎる

 

近頃、夜になると、ベランダに出て空を見上げている。夏の夜空に輝く幾千の星。デネブ、アルタイル、ベガを結んで、夏の大三角形を作ってみる。

 

夜空を眺めていると様々な想像に駆られる。子供のころの僕は、映画の『未知との遭遇』、『E.T.』、『スターウォーズ』、『メン・イン・ブラック』などの影響で、宇宙人の存在を固く信じていて、彼らとなんとか交信できないかと考えていた。この広大な宇宙の彼方に必ず、未知の文明、未知の感覚を持った知的生命体がいるはず……。

 

僕がこれほど宇宙人を求めているのだから、逆に言えば、僕を求めている宇宙人もどこかにいるはずである。地球人代表として、最初に宇宙人と親交を結ぶ人間は僕でありたい。ああ、宇宙はなんてロマンに満ちているんだ!

 

夜空を見上げ、この頃またそんな妄想に浸るようになったのは、SF小説『三体』を読んだことが原因であることに間違いない。

 

 

 

三体

三体

 

 

『三体』、全力でオススメしたい。超超超面白い!

 

作者は中国山西省陽泉生まれの劉慈欣(リウ・ツーシン)。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短編を執筆している。訳者の大森望のあとがきにあったが、劉は少年時代の貧困や、宇宙に魅せられた経験などが自身のSFの基盤となっていると言っているそうだ。

 

『三体』は、2006年から中国のSF雑誌に連載され、単行本として刊行されるや、たちまち人気が爆発。英訳版は、SF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞。これは、翻訳書として、そしてアジア人作家として初めての快挙である。オバマ前大統領も本書を絶賛しているらしい。

 

さて、この『三体』、どういった物語なのか簡単に紹介していきたい。

 

 

 

いきなりネタバレするが、本書のテーマは、宇宙人とのファーストコンタクトである。ファーストコンタクトを描いたSFは数多あるが、『三体』には、ほかのどのSFとも違う、話の展開の群を抜いた面白さとオリジナリティがある。

 

話は文化大革命の時代から始まる。科学者で主人公の葉文潔(イエ・ウェンジエ)は、この革命の内ゲバで物理学者の父を惨殺される。いきなり実録調で、リアルな恐ろしさがあり、びっくりする。これはSFなのか? いったい何がこれから起こるのか? と読者は物語に引きずり込まれる。

 

失意の中にある葉文潔は、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』に心惹かれる。父を殺された経験と、『沈黙の春』の殺虫剤によって死にゆく村の描写は、彼女の人間観に大きな影響を及ぼし、後に全人類を滅亡の危険にさらす行動へと彼女を駆り立てることになる。

 

 四十数年後、文潔は人生最期のとき、『沈黙の春』が自分の人生に与えた影響を振り返ることになる。この本に出会う前から、若い文潔の心には、一生治ることのない大きく深い傷が、人類の悪によって刻まれていた。しかし、この本に出会ってはじめて、文潔は人類の悪に対して理性的に考えるようになる。

 

成長した葉文潔は、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、ある極秘プロジェクトが進んでいた。そのプロジェクトこそ、SETI(地球外知的生命探査計画)である。(く~、たまらん!)

 

そして、物語の舞台は四十数年後に移る。この物語のもう一人の主人公、ナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体への潜入を引き受けた彼を、科学的にはありえない怪現象が襲う。

 

汪淼の眼前に汪淼にしか見えない数字が表れるのである。その数字は漸減していく。カウントダウンである! 一体何のカウントダウンなのか? 0になると何が起こるのか? 恐れ、パニックになる汪淼。僕はこのあたりから、物語に没入し、食事も睡眠も仕事も忘れ、夢中で本書を読み進めた。

 

そして、汪淼は、不思議なVRゲーム「三体」にのめり込む……。

 

 

 

警察官の史強(シー・チアン)をはじめとした魅力的でクセの強い登場人物たち、興奮が止むことのないストーリーの高いエンターテイメント性、それを支える科学の知識と中国の激動の現代史。小説『三体』のどこが面白いかと聞かれれば、挙げられるものはキリがないのであるが、この物語を特別なものとしているのは、なんといっても「三体」というタイトルの物語内ゲームのアイディアである。

 

VRゲーム「三体」の世界では、気候が比較的安定する「恒紀」と、気候が人類が滅亡するほど荒れ狂う「乱紀」が交互にやってくる。三体世界は勃興と崩壊を繰り返し、ゲームのプレイヤーの力を借りながら、文明のレベルを更新していく。

 

汪淼は、乱紀の原因を、三つの太陽が引き起こす「三体問題」であると推察する。三体問題とは、質量が同じ、もしくはほぼ同程度の三つの物体が、たがいの引力を受けながらどのように運動するかという、古典物理学の代表的な問題である。この問題には一般解が存在しないと言われているが、この問題を解決しない限り、プレーヤーは三体世界を救うことはできない。

 

このゲームのシステムと世界観がめちゃくちゃに面白い。これを思いつく作者の発想力と描写力のたくましさ……僕は思わずため息が出た。

 

さて、このVRゲーム「三体」と宇宙人がどのように絡んでくるのか……。それは、本書を読んでからのお楽しみ! 誰もがこの小説のとりこになることを保証します!

 

 

 

中国では、『三体』の続編、『黒暗森林』、『死神水生』も大ヒットし、社会現象となっているそうだ。『黒暗森林』の邦訳は2020年刊行予定。あ~待ちきれない!!