ゴロネ読書退屈日記

ゴロネ。読書ブログを目指している雑記ブログ。2人の息子とじゃれ合うことが趣味。

夢と保育参観と『シブヤで目覚めて』の話

 

駅から出られない夢を見た。

 

夢の中の駅は、さまざまな在来線が入り組んでいて迷宮のようで、なかなか目的のホームまでたどり着けない。階段を何度も登り降りした。これじゃあ間に合わない。今日は絶対外せない大事な仕事を抱えているのだ、と焦る。

 

目が覚め、ほっとした。大事な予定が控えているのに、障害があって間に合わないという夢はよく見る。その障害が「迷宮のような駅」というのは初めてのパターンだった。

 

 

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有給を取得し、息子の保育園に参観に行った。

 

参観に来ている保護者は皆母親で、父親は僕だけだった。今年度は特異な異動をし、定時退勤ができ、有給が取りやすいホワイトな職場で働いている。妻は相変わらずの激務で、休みを簡単に取ることはできない。自然、育児や家事は僕が中心に担うことになった。こういう保育参観のようなイベントにも積極的に参加している。

 

参観中、つい涙ぐんでしまった。いつから僕はこんなにヤワになってしまったのか。息子のことになると、僕はどうかしてしまう。

 

息子は友達と一緒に歌ったり、体を動かしたり、先生の声がけに大きな返事をしたりしていた……。生まれた時は未熟児だったのに、あれから4年経ち、こんなにも逞しく成長している。……と考えるともうダメで、目頭が熱くなってしまうのだった。

 

このように自分の息子の成長に感動すると同時に、自分が教育関係の仕事に携わっていることもあって、保育園の先生による幼児への接し方にも注目してしまう。

 

とにかく幼児への声がけがうまい。僕なぞ普段家で自分の子供の面倒を見るだけでもアタフタし、疲労困憊なのに、保育園の先生方は笑顔を絶やさず、あれだけ大勢の幼児の行動を巧みにコントロールしている。自身の仕事にも生かせるテクニックが多かった。保育士さん、まじリスペクト。

 

 

 

頑張っていた息子に今夜はカレーを作ってやろうと思い立ち、スーパーに行った。駅から出られない夢を見たのは、最近読んだ小説『シブヤで目覚めて』の影響があるかもしれないと、買い物をしながら考えた。

 

 

チェコで日本文学を学ぶ大学生のヤナは、素性がまだよく知られていない作家「川下清丸」の研究に夢中である。一方、分身のヤナは、2010年の渋谷に閉じ込められている。分身の彼女が街中を歩いても、「幽霊」であるかのように彼女のことを誰も見向きもせず、渋谷を離れてどこかに行こうとすると、すぐハチ公像の前に引き戻されてしまう……。

 

作者はチェコの新進気鋭、アンナ・ツィマ。ヤナと同じように、彼女自身も大学時代、日本文学を学んでいたそうだ。

 

物語の構造は多層的で、さまざまなジャンルの要素が詰め込まれているが、それをみずみずしい軽快な語り口でまとめてしまう技量がすごい。ページを進めるにつれ、その各層は絡み合っていき、読者は物語に魅了され、分身のヤナと同様、物語世界に閉じ込められてしまう感覚に陥る。

 

物語は、大学生のヤナの層、渋谷に閉じ込められた分身のヤナの層、そして、架空の作家「川下清丸」の小説「分身」の層で構成される。この川下清丸の造形と作中作「分身」にリアリティがあり、自分が知らないだけで、こういう作家と作品が実在していたのかと思ってしまったほどである。

 

日本文化への強い愛もビシビシと感じられ、かなり楽しんで読めた。今年イチオシの小説です。

 

 

 

家族で少し遠出して、横浜のランドマークタワーに行ってきました。来週からまた緊急事態宣言。

 

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