ゴロネ読書退屈日記

ゴロネ。読書ブログを目指している雑記ブログ。2人の息子とじゃれ合うことが趣味。

「主体性」を評価することについて

 

ラジオで自分のメールが読み上げられ、深夜にも関わらず小躍りしちゃった。こういうのはいくつになっても嬉しい。

 

メールを読んでくれたラジオは、「文化系トークラジオLife」。隔月で、社会や文化についてゲストたちが雑談を繰り広げる番組。僕は5年前くらいからこの番組のファンで、アーカイブも全て聴いた。

 

life.www.tbsradio.jp

 

今回のテーマは「努力の現在〜いま何にどんな努力をしていますか?」というテーマだった。予告編では、いかに必要のない努力を省略し、効率化するかといった「努力の合理化」の風潮が話題になった。

 

僕は自身が中学校の教員であるという立場から、教育現場での「努力の合理化」について番組にメールを送ってみた。

 

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Lifeクルーのみなさん、こんばんは。いつも楽しく拝聴しています。

 

私は中学校の教員をしています。昨今は教育現場も、児童・生徒に「努力の合理化」を求めるように変化しています。以前は勉強でも部活動でも、根性論に基づいた「がむしゃらな努力」が評価されるきらいがありましたが、今は適切な「努力の合理化」をしているかどうかが評価されます。この「努力」の捉え方は、制度面でも変わりました。

 

中学校では今年度から、高校では来年度から新学習指導要領が全面実施されますが、それに伴って、学習評価の在り方が改められました。最も大きな変化は、評定を支える学習評価の観点が、①「知識・技能」、②「思考・判断・表現」、③「主体的に学習に取り組む態度」の3点に整理されたことです。3点目の「主体的に学習に取り組む態度」というのが「努力の合理化」を評価する観点です。従前の学習指導要領では「関心・意欲・態度」と呼ばれていた観点で、従前と比べ、「主体的に学習に取り組む態度」は、学習内容を身につけるために、自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら学ぼうとしているかどうかを評価するという面が強調されています。ただがむしゃらに努力してるだけでは、高い評価は得られません。授業中に思いついたことをひたすら発言しまくったり、ノートの隅から隅まで漢字練習をしたりする姿勢を見せられても、学習を調整しているとは判断できないからです。

 

予測困難な時代に柔軟に対応し、新しい価値観を創造していくたくましい学習主体を育てるという偉い人たちの理想は分かりますが、現場の教員はこの「主体的に学習に取り組む態度」の評価をどのように見取るかということに苦労しています。ペーパーテストの結果では評価できない観点であり、学習の目標に照らして、自分は「何かできるようになったか/できていないか」、「どのように学習すればより成長できるか」といった学習者の振り返りの記述などを評価材料とします。評価評定は受験にも大きく関わる大切なものなので、教師には、できるだけ主観を排しながら丁寧に学習者の「努力の合理化」を評価していくことが求められています。

 

「努力の合理化」を評価する側も大変ですが、評価される側も大変です。いかに自分がよりよい「努力の合理化」に努力しているかを少年少女のころからアピールしていかなくてはなりません。これからの社会に歓迎されやすい人は、陰で歯を食いしばって努力を続ける人ではなく、自分の「努力の合理化」を巧みにプレゼンできる人なのかなと思ったりしています。

 

ゴロネ(男・31歳)神奈川県在住

 

 

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「関心・意欲・態度」からの時代からであるが、生徒の主体性を評価の観点とするというのは多くの問題点があり、個人的にはこの評価のあり方には憤りを感じている。

 

ラジオでも言及されていたが、「主体性」という本来数値で測れないものを育てよう目的でありながら、最終的にそれを数値で評価するというのは大きな矛盾である。生徒の主体性を評価し、数値という形で彼らにフィードバックすることによって、主体性の意味合いは一気に変わってしまう。

 

生徒は成績というリターンのために、自分は努力をしているということを必死にアピールしよとする。そうした努力は外発的動機付けによるものであり、主体性とはほど遠いところにあるように思えてならない。リターンがあるかないかは関係なく、目前にある学びが楽しいからその学びに夢中に取り組むというところに真の主体性があるはずである。

 

ということで、以前「文化系トークラジオLife」の「春の頑張り迷子相談室」というテーマで、三宅秀道先生がおっしゃった「頑張りは投資ではなく、消費」という言葉がここ最近になってじわりときているのである。

 

 

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まあ、ただ批判するだけでは何も始まらないし、現行制度の中でやっていくしかない。国は学習評価のあり方についてどのように考えているのか、新学習指導要領の下、実際にどのように学習指導を行っていくのかということをちゃんと勉強しておく必要がある。学習指導要領とともに以下の国研の資料は必読である(高校版はまだ案しか出ていない)。

 

 

加えて、新3観点での授業指導案作成例は、以下の本でかなりわかりやすく紹介されているのでおすすめ(これも高校版はないが、小中は各教科あり)。