『古典落語』と出奔の妄想と「私の癒やし」の話
今週のお題「私の癒やし」
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三千世界の烏を殺し ぬしと朝寝がしてみたい(高杉晋作)
『世に棲む日日』(司馬遼太郎・全4巻)をやっと読み終えた。高杉晋作って、やっぱりカッコイイなあ。詩人的な感性と、「動ケバ雷電ノゴトク、発スレバ風雨ノゴトシ」行動力。こりゃ女性人気の高いのも頷ける。
就職する前は、文庫本4冊くらいペロリと読めたのになあ。言い訳かもしれないけど、今は仕事の忙しさで、読書の時間が充分に確保できない。もんもん。
☆
自動車を日産のフリードに替えた。子供ができたので、いつまでもボロボロの軽じゃいけないと思い、少し広々とした車を購入したのだ。最近ではいちばん大きなお買い物。
ただ、21歳のときから7年乗っていた軽とお別れするのは何だか寂しく、珍しくちょっぴりセンチな気分になった。
『世界の辺境とハードボイルド室町時代』に書いてあったけど、アフリカでは日本でつくられた日本車の中古がよく売れているらしい。
日本人は人の手がついたのものを使うのを嫌う傾向があり、「クルマの持ち主が代わった瞬間に、価格が6割以下に下落する国は日本しかない」そうだ。
僕はアフリカの舗装されていない道路を僕のだった軽が走っているのを想像した。地平線に沈む燃えるように赤い夕陽に向かってトロトロと走っていく……。
バイバイ、マイ・カー。ハロー、ニュー・カー。
恥ずかしい話だが、ファミリーカーを自分の給料で買ったことで、なんだか社会的なステータスも上がった心持ちになった。人間的には何も進歩してないのにね。
通勤には高速道路を使っているのだが、車を新しくし、かなり通勤が快適になった。前の車は、高速を走るとガッタガタと音を出して怖かった。
しかし、通勤は快適になったが、前の車に比べ走行音が静かで、しかも高速には信号がないので、疲れている朝は運転中に眠気がやってくる(起床は5時半)。
大事故につながりかねないので、脳を覚醒させるために、落語のCDを聞きながら、通勤している。逆にもっと眠くなるだろと言う人もいるかもしれないが、落語初心者の僕は毎朝ワクワクしながら聞いている。最近は志ん朝にどハマり中。
勢いで、講談社学術文庫の『古典落語』を買った。『三枚起請』がお気に入り。
むかしの狂歌に、
傾城の恋はまことの恋ならで
金持ってこいが本当のこいなり
というのがありますが、傾城、つまりおいらんというものは、客にうまいことをいってだますのが商売だっのですから、金持ってこいという恋だとは、まことにうまいことをいったもんで……。
一度でいいから寄席に行ってみたいな。
☆
基本的に仕事は好きだけれど、睡眠や読書や家族と過ごす時間がない忙しい日が続くと、なんのために働いているのか分からなくなり、出奔(しゅっぽん)したくなる。
出奔(※逃げて、姿をくらますこと)って、いい言葉だなあ。初めてこの言葉を知ったのは、三島由紀夫の『金閣寺』を読んだときだった気がする。『金閣寺』の主人公は、住職から後継にするつもりはないと言われ、寺の勤めが嫌になり、出奔してしまう。僕も仕事が辛くなったら、職場からぽんぽん出奔したい。
仕事の約束も締め切りもみんな反故にして、ゆっくり朝寝がしてみたい。
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さて、「私の癒やし」ですが、やっぱりそれは現在生後7カ月の息子です。
どんなに疲れて帰ってきても、息子の寝顔を見ると「明日も頑張ろう」って気分になります。