ゴロネ読書退屈日記

ゴロネ(89年生まれ)一児の父。読書ブログを目指している雑記ブログです。息子ハルタとじゃれ合うことにはまっています。

2018年上半期に読んだ、心に残る20冊

『故郷』(魯迅

故郷故郷

 

 『故郷』 は、作者の魯迅自身をモデルとした「私」が、20年ぶりに帰郷するところから始まる。「私」は、時代のうねりの中で貧困に苦しむ故郷の人々の暗く絶望的な現実に打ちのめされる。「私」の家の雇い人の息子で、少年時代の親友である「閏土(ルントー)」も、子どものときの快活さとは打って変わり、暗い影を落とす大人へと変貌していた。

「閏土」の息子と彼を慕う自分のおいのことを「私」が思い、彼らには「新しい生活」をしてもらいたいと願う最後の語りが印象に残る。国語の教科書にも載る名作です。

 

 『宮本武蔵』(吉川英治

宮本武蔵(一) (新潮文庫)宮本武蔵(一) (新潮文庫)

 

VS吉岡一門が燃える。佐々木小次郎との巌流島での戦いは、引っ張った割にはあっけない決着な気がする。『バガボンド』は、この巌流島の戦いをどのように料理してくれるのか楽しみです。

 

 『翔ぶが如く』(司馬遼太郎

新装版 翔ぶが如く (1) (文春文庫)新装版 翔ぶが如く (1) (文春文庫)

 

2018年の大河ドラマ「西郷どん」にはまり、西郷隆盛の人生の後半戦を描くこの小説に手を伸ばした。司馬遼太郎の小説には、やっぱり心が揺さぶられる言葉が多く、『翔ぶがごとく』にも多くの赤線を引いた。

「大衆は明晰よりも温情を愛し、拒否よりも陽気で放漫な大きさを好み、正論よりも悲壮にあこがれる。」

 

『蠅の王』(ウィリアム・ゴールディング) 

蠅の王 (新潮文庫)

蠅の王 (新潮文庫)

 

 「未来における大戦のさなか、イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が攻撃をうけ、南太平洋の孤島に不時着した。大人のいない世界で、彼らは隊長を選び、平和な秩序だった生活を送るが、しだいに、心に巣食う獣性にめざめ、激しい内部対立から殺伐で陰惨な闘争へとの駆りたてられてゆく……。」というあらすじの非常に恐ろしい小説。闘争が極限へと達するクライマックスは手に汗握った。

大人のいない孤島に生きる少年たちは、正体不明の獣に怯え、不安から衝突する。ただひとり、「獣というのは、ぼくたちのことにすぎないかもしれない」と気づいたサイモンという少年は、人間の内なる暗黒の象徴である蠅の王と対決する。自身の獣性に目をそらさず、向き合うことで、初めて人は人間性を獲得できるんじゃないかなと思ったりしました。

 

『愛についての感じ』(海猫沢めろん) 

愛についての感じ (講談社文庫)愛についての感じ (講談社文庫)

 

僕が大好きなラジオ番組である「文化系トークラジオlife」の出演者の中でも異彩を放つ海猫沢めろん先生の小説。はみ出し者たちの恋を描く短編集である。

ヤクザと色町で働く女性のはかない交流を描く短編、『新世界』がおすすめ。

 

 『大日本サムライガール』(至道流星) 

大日本サムライガール1 (星海社文庫)

大日本サムライガール1 (星海社文庫)

 

拡声器を片手に街頭で叫ぶ謎の演説美少女・神楽日鞠(かぐらひまり)。彼女の 最終目的は日本政治の頂点に独裁者として君臨し、この国を根底から変えることである。その目的達成の手段として、さまざまな人々の協力を得ながら、美貌を武器にアイドルとして活動していく。 

キワモノかと思いきや、キャラが立ち、物語の構成も緻密な本格的なエンターテイメント作品に仕上がっている。右翼とアイドルという意外な組み合わせが、読者を魅了する面白さを十二分に発揮している。

 ヒロインである神楽日鞠がすごく魅力的で、彼女のアイドルとしてずれた言動にクスクスと笑ったり、(僕は右思考ではないけど)彼女の国のことを心の底から思う真摯な姿勢に感動させられたりしたのでした。

 

『グローバライズ』(木下古栗)

グローバライズグローバライズ

 

読者によって好き嫌いが真っ二つに割れるであろう木下ワールド。僕は時に木下ワールドが恋しくなったり、憎たらしくなったりする。読むと、体調によって、極上な時間を過ごした気分になるときと、時間をかなり無駄にした気分になるときがある。

短編集である本書の中には、同じ意味不明な下ネタで終わる2つの短編などがあります。

 

 『風姿花伝』(世阿弥) 

風姿花伝 (岩波文庫)

風姿花伝 (岩波文庫)

 

 『風姿花伝』は、世阿弥が父である観阿弥から受け継いだ能の奥義を、子孫に伝えるために書いたものである。この書の中で世阿弥は、若い頃の初心、人生の時々の初心、老後の初心を忘れてはならないと言っている。

若い頃の初心とは、具体的には24〜25歳のころである。この時期こそ、改めて自分の未熟さに気づき、周りの先輩や師匠に質問したりして自分を磨き上げていかなければ、「まことの花」にならないと世阿弥は言っている。世阿弥が言うように「初心」を忘れることなく、自身を日々更新する努力をする生き方をしたい。

 

いのちの食べかた』(森達也) 

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)

 

学生のときに読んだけど、久しぶり読み直した。著者は、映画『A』などを監督したドキュメンタリー作家、森達也

この本には、牛や豚が「と場」に運ばれ、どのように屠殺(とさつ)され、解体されるのかが平易な文章で詳細に書かれている。自分自身の食生活を省みることができたり、「と場」で働く方々への敬意や、食物に感謝の気持ちがわいてきたりする本です。

 

社会学』 (長谷川公一、浜日出夫、藤村正之、町村敬志) 

社会学 (New Liberal Arts Selection)

社会学 (New Liberal Arts Selection)

 

にわかに「社会学」 を勉強したい気持ちになり、入門書として良さそうな本書を買った。丁寧な解説でとても分かりやすい。各テーマごとに、参考文献が紹介されていて、読書の幅が広がります。

 

『暇と退屈の倫理学』(國分功一郎

 

 昨年読んだ『中動態の世界 意志と責任の考古学』にドはまりし、同じ著者が書いた本書にも手を伸ばした。「何かをしなくてはならない」という強迫観念に駆られる、あの暇と退屈の正体がよく分かります。

 

人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』(井上智洋)

今後AIを搭載した機械が人々の雇用を順調に奪っていくと、今から30年後の2045年には、全人口の1割ほどしか労働しない社会になっているかもしれないそうだ。僕みたいな役立たずは真っ先にAIに仕事を奪われるであろう。

9割の人が職を失ってしまうそんな時代を救う現実的な制度として、筆者がおすすめしているのが、「ベーシックインカム(収入の水準に拠らずに全ての人に無条件に、最低限の生活費を一律に給付する制度)」である。労働意欲のない僕は、「ベーシックインカム」が導入される時代を今か今かと待ち望んでいます。

 

『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』(古市憲寿) 

古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)

古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)

 

様々なメディア媒体で活躍する若手社会学者の古市憲寿橋爪大三郎宮台真司大澤真幸など、日本の社会学のビッグネームと「社会学とは何か?」をテーマに対談している。

「Life」のメインパーソナリティである鈴木謙介(チャーリー)とも対談していて、そこで古市憲寿の「僕がパブリック社会学に何かの貢献ができるとすれば、これからどうしていけばいいと思いますか。」という質問に対し、チャーリーが「『マージナル・マン(境界人)』としての役割を意識的に引き受けていくということ。」と発言するのが興味深い。

 

 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(千葉雅也)

勉強の哲学 来たるべきバカのために勉強の哲学 来たるべきバカのために

 

この本には、「勉強とは、これまでの自分の自己破壊である。」と書いてある。勉強とは、「新たな環境のノリに入る」ことらしい。「アイロニー」と「ユーモア」という言葉を使い、勉強へ取り組む姿勢のあり方が分かりやすく説明されていて、夢中で読み進めた。

勉強の具体的な実践の方策として、勉強用のノートづくりを維持することが推奨されている。「勉強用のノートとは、生活の別のタイムラインそのものであり、自分の新たな可能性を考えるための特別な場所なのだ」と著者。

 

  『世界からバナナがなくなるまえに:食料危機に立ち向かう科学者たち』(ロブ・ダン)

世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち

 

この本には、病原体による現代の食糧危機と、それに立ち向かう科学者たちの戦いが熱を持って書かれている。タイトルにあるバナナだけでなく、私たちが頼る数少ない作物は、すべて危機にさらされている。……僕が大好きなチョコレートの原料である、カカオも例外ではない。この食料危機の危険性を一気に高めたのが、大規模なアグリビジネス(農業関連産業)の台頭である。

アグリビジネスは、生産の極端な効率化を図るために、広域な農場に単一栽培(モノカルチャー)を行っている。短期的な効率化には最上の手段ではあるが、広大な農場に遺伝子的に同一の作物しかないというのは長期的に見て非常に危険である。遺伝子的に同一ということは、同じ害虫や病原体に弱いということである。一つの作物が弱点である害虫や病原体に攻撃されると、その農園の作物が全滅する道にそのままつながるのである。

故意でなくとも、自然に害虫や病原体が農場に拡散する可能性は常にある。本書ではそういった食糧危機に対する科学者の地道な戦いと、私たちに何ができるかということが書かれていて、最初から最後まで知的好奇心を大いに刺激されました。

 

 『パパは脳科学者 子どもを育てる脳科学』(池谷裕二

パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学

 

この本では、脳科学者である著者が、娘さんの4歳までの成長を、脳の機能の原理から分析して、成長の一か月ごとに章立てして記録している。自分の息子(現在1歳2ヶ月)の成長と合わせて読み進めていて、とても勉強になります。この娘さんと比べると、自分の息子の成長はかなり遅れており、不安になる笑

  

『1990年代論』(大澤聡 編)

1990年代論 (河出ブックス)

1990年代論 (河出ブックス)

 

様々な論者が多角的に90年代を論じている。「社会問題編」では、現在の様々な社会問題が90年代に端を発していることが分かる。「文化状況編」では、様々な90年代のコンテンツが軽妙に論じられていてワクワクした。90年代は幼年期であった自分。もう10年早く生まれて、全身でこれらのコンテンツの受容を楽しみたかった。

 

 

『不安な個人、立ちすくむ国家』(経産省若手プロジェクト)   

不安な個人、立ちすくむ国家不安な個人、立ちすくむ国家

 

 

昨年5月に経産省の若手プロジェクトが発表したレポートを書籍化したものである。このレポートでは、変化する社会状況や、その中で増幅される個人の不安を指摘と、変わりつつある価値観に基づいた新しい政策の方向性の提示がまとめられている。日本社会のひずみが浮き彫りにされていて、日本の未来について悲観的にならざるを得ない。 

書籍版には、経産省若手プロジェクトと養老孟司の対談が収録されている。養老孟司が、高齢者が「死にたくない!」とわめく様子を見て、若者に向けて「早く大人になってしまい、やりたいことを後回し後回しにしていくと、人生を生きそびれてしまいますよ」と言っているのが印象的。

 

 『新・日本の階級社会』(橋本健二

新・日本の階級社会 (講談社現代新書)新・日本の階級社会 (講談社現代新書)

 

現代の日本社会が「階級社会」に変貌してしまった現実を、様々な社会調査データを基にして暴いていくといった内容である。階級格差は加速しており、特に非正規労働者から成る階級以下の階級(アンダークラス)の貧困が甚だしい。しかも、階級は世襲として固定化しやすく、親の階級以上の階級に転じることは難しくなっている(逆に「階級転落」の可能性は高い)。

この本では、格差拡大が社会全体にもたらす弊害が具体的に述べられて、読後、現代社会に対する危機感をちょっぴり持ったのでした。

 

 『若い読者のためのサブカルチャー論講義録』(宇野常寛) 

若い読者のためのサブカルチャー論講義録

若い読者のためのサブカルチャー論講義録

 

この本は、評論家の宇野常寛による、マンガやアニメやゲームといった「オタク的なもの」を取り上げたサブカルチャー論の大学での講義録をまとめたものである。ここ40年ほどのオタク思想を広く(浅く)学べます。

宇野常寛は「life」の出演者でもありますが、番組中、話の流れをぶった切り、自分の話したい話を止まることのなく話しまくるので、個人的には彼をあまり好きではありません。

 

 ☆

 

2018年下半期も読書ライフを楽しみたいです。