ゴロネ読書退屈日記

ゴロネ。読書ブログを目指している雑記ブログ。2人の息子とじゃれ合うことが趣味。

『華麗なる一族』と友人の結婚式とその夜の話

 

友人の結婚式が行われる会場がある六本木に、式開始の一時間前に着いてしまった。僕はコーヒーチェーン店に入り、アイスコーヒーと朝食を注文した。外は暑かった。スーツはしんどい。

 

先に来たアイスコーヒーをすすりながら、『華麗なる一族』の下巻を読んだ。二か月、上巻からちびちびと読み進めていたが、もうすぐ読み終わる。

 

華麗なる一族(下) (新潮文庫)

華麗なる一族(下) (新潮文庫)

 

 万俵大介は、大同銀行の専務と結託して、鉄平の阪神特殊鋼を倒産へと追いやり、それをも手段に、上位の大同銀行の吸収をはかる。鉄平は、三雲頭取を出し抜いた専務と父親の関係を知るに及び、丹波篠山で猟銃自殺をとげる。帝国ホテルで挙行された新銀行披露パーティの舞台裏では、新たな銀行再編成がはじまっていた。聖域〈銀行〉にうずまく果てしない欲望を暴く熾烈な人間ドラマ。

 

自殺してしまった鉄平のよき理解者であった大同銀行の三雲頭取が、鉄平を自殺へと追いやった万俵大介に投げかける言葉が印象に残った。

 

「企業発展のためには、肉親でも何でも、人間的なものを一切、犠牲にし、置き忘れてしまってもいいものでしょうか、人間性を置き忘れた企業は、いつか、何処かで必ず、躓く時が来るというのが、私の信条です」

 

「万俵さん、孟子の教えに、『天下ヲ得ルニハ 一不義ヲ成サズ 一無辜ヲ殺サズ』という言葉がありますねぇ」

 

「天下ヲ得ルニハ 一不義ヲ成サズ 一無辜ヲ殺サズ」というのは、天下を得るには、一つの不義もなさず、一人の罪なき者も殺してはならないという意味である。万俵大介は同じ邸宅に妻と愛人を同居させ、ときには三人で夜のベッドを共にする生活を妻に強要するという不義の私生活を営んでいる。さらには、鉄平は自身の子ではなく、祖父の子ではないかという暗い疑惑を持ち、鉄平を追い詰めてしまう(鉄平の死後、鉄平は大介の実の子だったことが判明する)。三雲の言葉は、大介の胸を鋭くえぐった。

 

鉄平や三雲のような自身や他者に正直で、高い理想を持つ人たちが不幸に陥り、悪党が巨利を得る結末に、僕は、もうちょっと救いがあればいいのにと悲しくなったが、そこに資本主義社会のリアルある気がした。

 

さて、次は何の本を読むかな。……朝食は注文から40分経っても来なかったので、諦めて店を出ることにした。

 

 

 

結婚式の新郎のプヨ(あだ名)は高校時代の友人である。同じバスケ部に所属していた。高校時代のバスケ部には同学年の部員が20人いた。卒業から12年ほど経つが今でも全員が仲が良い。

 

仲が良いので、結婚式には誰を招待するのかに悩んでしまう。まさか高校時代のバスケ部の友人だけで20人にも呼ぶわけにはいかない。僕も自身の結婚式を行ったときには、誰を招待するかかなり迷った。

 

プヨの結婚式に呼ばれたのは、僕を含め9人。みんな30歳となり、体型もおっさんに近づいている。端的に言えば、皆、太った。まあ僕もこの一年で3キロ、2年で6キロと右肩上がりで太っているので人のことは言えないが。

 

プヨの結婚式と披露宴は素敵で楽しく、食事もお酒も美味しかった。プヨも立派になったなあ。僕は高校時代のプヨを思い出した。眉毛をいじりすぎて顧問に叱られたプヨ、教室の後ろにミニ四駆のコースを設置して担任に叱られたプヨ、たくあんのような匂いの屁をこいて先輩に叱られたプヨ‥‥。そんなプヨも今では海外を飛びまわる立派な商社マンとなり、自身の家庭を持とうとしている。

 

お嫁さんからは聡明さが感じられた。彼女も世界を相手に仕事をするキャリアウーマンだ。披露宴で、彼女の高校時代からの友人がスピーチをした。お嫁さんは、高校生の頃から、世界の人と関わり、国際的に活躍できる仕事をしたいと将来の夢を語っていたそうだ。

 

そのスピーチを聞いていた、僕の隣に座るノッポ(あだ名)が言った。「素晴らしいね。おれらが高校生のときは、ほぼ、おっぱいの話しかしてなかったよな」

 

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披露宴で出たフォアグラ。いつかご飯にフォアグラをのせて食べたい。

 

二次会はなく、披露宴の後、仲間たちとカラオケに行って、プヨを待った。同世代とのカラオケは久しぶりで、楽しかった。オレンジレンジポルノグラフィティバンプオブチキンレミオロメンなどの曲を皆で合唱した。僕は、『おジャ魔女カーニバル!!』を腰を振りながら歌った。

 

3時間くらい歌い、飲んだが、ついにプヨはやってこなかった。新郎は忙しいよね。仲間たちは解散した。

 

 

 

酔いがいい感じにまわっていたが、帰りに新宿の紀伊国屋書店に寄った。じっくり見て回ったが、結局購入したのは2冊。

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1冊は、中国SF、『三体』。話題の新刊であり、紀伊国屋書店では平積みされていたが、僕の近所の本屋には置いていない。

 

三体

三体

 

 

もう一冊は、斎藤哲也編著の『読解 評論文キーワード』 。「文化系トークラジオLife」のフェアコーナーの棚に置いてあった。

 

 

紀伊国屋書店の外に出たが、夜だというのに、まだ暑い。この日はかなり汗をかいた。歌舞伎町の喫茶店に入り、酔い覚ましのコーヒーを飲みながら、購入した本をしばらく読んだ。

 

この喫茶店に入るまでに、たくさんの客引きに声をかけられた。歌舞伎町では、「客引きはボッタクリだ!」という放送がバックミュージックのように延々と流れている。大きな笑い声、パトロールする警官、よろめきながら歩く人、寝そべる人、時代を30年くらい先取りした奇異なファッションの人、映画館の上にはゴジラ、散らばるゴミ、きらめく広告のネオン‥‥。強いサイバーパンク感。

 

東京の整備などせずに、あと1年で、一層「ブレードランナー」的都市の装飾を施せば、東京オリンピックに来た海外の人も逆に喜ぶんじゃないかなあ。