『論語』とお土産のオムライスの話
近頃、毎朝10分間、『論語』の書き下し文を音読している。
古典を音読するのは好きで、特に『論語』はいい。心が引き締まる感じがする。
◎僕の好きな『論語』のことば・ベスト3◎
3位
君子は諸を己に求む。小人は諸を人に求む。
(意味)君子は何事も自分の責任であると考えるが、小人は反対にすべての責任を人に押しつけてしまう。
2位
之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らざると為す。是れ知るなり。
(意味)わかっていることはわかっている、わからないことはわからないとはっきりさせること。それが知るということだ。
1位
……この記事の最後に書きます。
☆
先日の夜、職場で仲のよい、男性の先輩と後輩の女の子と僕の3人で、先輩の行きつけの居酒屋に飲みに行った。
後輩の女の子は、柿の絵と「KAKI」というアルファベットがプリントされたトレーナーを着ていた。
「なにそれ?その奇抜なデザインのトレーナーはどこでお買い求めになったの?」と僕は聞いた。
「これは、芸人の渡辺直美のブランドです。新宿に売ってました。いろいろなデザインがあったんですけど、これがいちばん可愛いなって思って」と後輩。
話は多岐にわたった。職場の話、趣味の話、恋愛の話、家族の話……。
話とお酒が進み、僕はいつになく酔いが早くまわった。
「ここはオムライスがまじで旨いんだよ。それをシメに食うべ」と先輩。
出てきたオムライスは確かに旨かった。チーズが入っていて、その量と溶け具合が絶妙であった。
オムライスを食べ終わるころ、妻から「今日は何時に帰ってくるの?」とLINE。顔文字も絵文字もスタンプもない。
「帰り遅いと嫁さんがキレるかもしれないんで、そろそろお開きにしましょうか。」と僕が言うと、「ちょっと待って」と先輩は立ち上がった。先輩は厨房のほうに行き、何かが入ったビニール袋を二つ手に提げて戻ってきて、それを僕と後輩の女の子にそれぞれ渡した。
中を確認すると、パックにつめられたオムライス。先輩が店の人に事前に頼んで、お土産用に作ってもらっていたのだ。
先輩は言った。
「それ、おれのおごり。嫁さんに持って帰って食べさせてやんなよ」
……かっけぇ。
サウイウ先輩ニワタシハナリタイ。
それにしても、この夜は酔った。頭がくらくらした。
「一人で帰れっか?また終点まで行っちゃうんじゃないの?」と先輩。
三人それぞれ帰りの方角と手段が違う。僕は飲み会の帰りの電車に一人で乗ると、自分が降りるべき駅を寝過ごしたり、自分の荷物を車内に置き忘れてしまったりすることがよくある。
僕は足をふらつかせながら、「だいじょうぶっす。おなじあやまちはくりかえしません、おぼろろろろろ」とか言った気がする。
解散し、電車に乗り、イスに座ると、急激に眠気がやってきてすぐに眠りに落ちた。
はっと目覚めると、電車のドアが開いていた。どこかの駅に停車している。外の風景を凝視し、自分の降りる駅だということがわかった。
立ち上がり、ドアが閉まる前に小走りで下車した。
「ふう、ぎりぎり降りられてよかった」と僕はホームで安堵した。
電車から降りて、五分ぐらい経ったときだったかな。
手に何も持っていないことに気がついたのは。
……オムライスを電車に置いてきてしまった。
☆
過ちて改めざる、是を過ちと謂う。
(意味)過ちを犯して、そのままにして改めようとしない。それが本当の過ちである。