文化系トークラジオLifeのイベントに行った日曜日の話
1
朝は遅めに起きた。
昨夜のお酒が残っていて、少々胃がもたれていた。自分にしてはよく飲み、よくしゃべった夜だった。
妻は僕が起床したことを確認すると、近所のファミレスに勉強に出かけた。中学校の理科の教員である妻は、育児休暇をまもなく終え、4月から職場に復帰する。それに備え、妻はこの頃、ファミレスでせっせと教材研究に励んでいるのだ。がんばれ。
僕と2歳のハルタは、朝食に昨夜の残りのキーマカレーを食べた。カレーは二日酔いにやさしい。朝食を終えると、もうすぐ1歳になるレイにミルクをやったり、風呂掃除をしたり、洗濯物を干したりした。
僕たち夫婦は、二人が家にそろうとき、こうやって交代で、片方が育児・家事をして、片方がファミレスに勉強や読書をしに行くことがよくある。という話を、職場の年配の同僚に話したら、「お母さんは、子供が小さい内は、自分のことは後回しにして、子供となるべく一緒にいてあげたほうがいい」と言われた。ふむ、そういうものかしら。僕らは育児について初心者で、不勉強なので、そういう育児論には疎い。
ネットで動画を視聴しながら、食器を洗っていると、レイの叫ぶような泣き声が聞こえ、慌てて駆け付けた。うつ伏せになって泣くレイは、唇から少し出血していた。最近やっと歩けるようになったレイは、転倒の際に、口を切ってしまったのだろう。かわいそう。泡がついたままの手で、抱いてやった。
2
午後になり、帰宅した妻とバトンタッチ。僕は新宿に出かけた。
新宿に向かう電車で、ニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った』の下巻を読んだ。
「おお、ツァラトゥストラよ、あなたは知恵の石だ!あなたはあなた自身を高く投げた
― しかし投げられた石はすべて - 落ちる!」
あ~、ムズカシイ~。いろんな解説書と併読しているが、話の全てが何かのメタファーで、言いたいことを遠回しに言うので、読むのが段々とつらたんになってくる。読む内、電車の揺れが心地よくなってきて、眼が重くなり、寝てしまった。
新宿に来た目的は、僕が愛聴するラジオ『文化系トークラジオLife』のトークイベントへの参加である。トークイベントへの参加は初めて。同じ愛聴者の友人Yと一緒に参加した。会場は紀伊国屋書店。
ライターの速水健朗さん、宮崎智之さん、書評家の倉本さおりさん、編集者の斎藤哲也さん、社会学者の塚越健司さんなど、ラジオで声だけ聴いていた人たちが実際に目の前にいたのでドキドキした。トークのテーマは、「文化系大新年会2020-2019年のオススメ本これだ!」であった。どの方も本の紹介を魅力的になさるので、紹介されたすべての本を読みたくなってしまった。
トークの流れで、塚越健司さんが「イクメンはリベラルだと思われがちだが、実はイクメンには保守派のほうが多いという調査結果がある」とおっしゃていたのが印象に残った。なぜリベラルのほうが多そうなのに、逆の結果が出るのだろうか。その理由として、保守派の男性はいつでも女性の優位に立ちたいという傾向がある、だから、彼らは「育児や家事でも女性に負けたくない」という考えのもとイクメンに励むのではないかという説があるのだそうだ。なるほど、僕が育児や家事をするのも、無意識下でそういうマッチョイムズが働いてるのかもしれないわん。
トークイベントが終了すると、その場で紹介された本の即売会が行われた。僕も含め参加者のみなさんは、すごい勢いで本を手に取っていた。なんとなく催眠商法と似ているような気がしないでもなかったが、あまりそれは気にしないようにした。
3
会場からでると、Yと立ち飲み屋で焼き鳥を食べながら飲んだ。
Yは高校時代からの友人で、30歳になった今でも仲良くしてもらっている。趣味嗜好が重なるところが多いので、話していて楽しい。トークイベントでの話題の延長で、社会の道徳観や価値観がこの頃どんどんと変化していることなどについて話した。
結局、人生の価値づけは各個人でしていき、それをお互いに尊重し合える心を持つ強い人間になっていくしかないんじゃないかなと思った(「価値観の違いを認めない」という価値観も尊重するのか?といった問題もあるが)。社会一般に正しいとされる道徳観や価値観、常識といったものは昨今あまりに移ろいやすく、それに頼ってばかりはいられない。
神は死んだ。たくさん死んだ。これからもバタバタと死んでいくだろう。
4
即売会で購入したのは以下の写真の4冊。左から、ジェントルマン中村『ようこそ!アマゾネス☆ポケット編集部へ』(倉本さおりさん選)、梶谷懐・高口康太『幸福な監視国家・中国』(塚越健司さん選)、綿野恵太『「差別はいけない」とみんないうけれど』(斎藤哲也さん選)、松本卓也『創造と狂気の歴史 プラトンからドゥルーズまで』(塚越健司さん選)。
本ばかりに散財する僕に、妻はあきれ顔。いや、これでも購入冊数を抑えたほうなんだよと言おうとしたが、やめた。
本を買っただけで満足してしまいがちな僕。時間がかかってもいいので、最後までちゃんと読み遂げたいと思います。